ぜぶらいと

オタクごと:リアルごと=8:2ぐらい。の予定。

Dear Prince 〜乾先輩へ〜

2018年5月20日をもって、テニミュの青学9代目が卒業した。

彼らが新青学に決まり、情報解禁がされた約2年前、手塚役のうのくんは告知ツイートを何度か削除しては上げ直していた。確か最初のツイートには「9代目」というワードが含まれていたはずだ。テニミュの青学において、卒業していないキャストはキャラ名のみを名乗るべきというルールがあることを、テニミュ初心者だった私はこの時初めて知った。ついこの前のことのような気がするが、彼らは先日の挨拶でもう「9代目」と名乗る立場になってしまった。時の流れは早い。

9代目は私にとって初めて最初から最後まで見届けた青学で、リョーマ役のにちかくんを除く彼らは、もう二度とキャラとして目の前に現れないのだと思うと不思議な気持ちになる。もちろん、しょう君の乾先輩も。

ドリライから時間も経っているしただの自己満足なんだけれど、私にとって特別なキャラになった乾先輩への気持ちや思い出を語ります。長いです。

 

テニスの王子様という作品を好きになってから十数年。人生の半分以上をこのジャンルに浸かりながら、特に好きなキャラとして乾貞治という名前を挙げることはおそらく一度もなかった。取り立てて苦手だとか嫌いだという印象もなく、ニュートラルに見ていたと思う。2014年当時、Twitterで流行っていたテニスのキャラを自分の好きな順にソートできるツールの結果の写メを残していたものを見返したが、100キャラ中49位だった。多分、いつ結果をとってもそれぐらいの位置だったと思う。

 

それを変えたのは、テニミュ3rd関東氷帝公演の凱旋初日。2バルの立見席から双眼鏡越しに覗いた乾先輩。校内ランキング戦で手塚に負けた時の、絶望的な表情と流れる汗は、1年半以上経った今でも忘れられない。すとーんと何かに落ちたかのように、「あ、私はりょーせい君の乾先輩の演技が好きだ」と思った。そのまま終演後に、それまで過去公演を含めて1枚も買っていなかった乾の写真を初めて買った。ちょうどジャンプショップで過去写真販売のフェアもやっていたので、後日に過去写真も買い足した。多分4種類か5種類は買ったと思う。まさか自分にとっての10回目の3rd関東氷帝公演で、いきなりこんなことになるとは、と思った記憶がある。思うように乾先輩を見られたのはその日だけで、その後に1回見切のチケットを持っていた他は、当日券に外れたり予定があったりで劇場には入れず、卒業の日の大千秋楽もライビュで見届けた。

せっかく好きになれたりょーせい君の乾先輩を心ゆくまで見ることはできなかったが、乾というキャラを見る目が少し変わった。私が好意をもったのは「乾貞治」というよりは「りょーせい君の乾」と言った方がしっくりくるような感じだったが、気になる存在になった。

 

その状態からの、9代目のビジュアル発表とキャストコメント。新しい乾先輩が、あまりにも自分の好みどストライクなビジュアルであることに気付いてしまった。なにこれ。めちゃくちゃカッコいい。しかも、すごく「乾っぽい顔立ち」をしているなぁと思った。切れ長の目にキリッとした眉、スッと通った鼻筋。ハッキリとした輪郭、顎のライン。TSCのお披露目会は仕事の都合で申し込まなかったが、流れてくる写真がどれも素敵だと思った。六角公演の初日が楽しみで仕方なかった。

 

実際の六角公演の初日は、新青学のあまりにも残念なクオリティ(卒業公演の8代目の試合の再現を冒頭に持ってくるというのが先代との比較を煽った上に、私が代替わりというものを初めて経験したことも感じ方に多大に影響しているとは思う)と、氷帝の演出の盛大な解釈違いで、長いオタク人生の中でも5本の指に入るぐらいには死にたい1日だった。なんせ終演後、最初にTwitterで呟いた一言が「まだテニミュ好きでいさせて」。あまりにも負の感情が大きすぎて、勢い余って京急に身を投げなかった自分を褒め称えたい。呆然としすぎて、せっかく乗れたその終電では最寄り駅への乗り換えを忘れて乗り過ごしてはしまったけど。

幸いなことに次の日はマチソワで別作品観劇の予定があり、それが楽しかったことと、テニミュ初日のアンケートを書いたりして少し冷静になれたことでなんとか心を落ち着けることができた。初日の終演直後には良席を含めて手持ちの全て手離そうかとさえ思った六角公演を、もう少し落ち着いて見ようと思った。

 

しょう君の乾先輩は、かっこよかった。少し粘っこいような、単語ごとにゆっくりはっきり発音するような喋り方はちょっとひっかかるが、とにかくビジュアルが好みだった。「顔が好き」は魔法だ。だって本能だもん。抗えない絶対的な力。

ジャンルや界隈によっては「顔ファン」は馬鹿にされたり嫌悪されたりする風潮があるが、人に迷惑をかけなければ、別に何も悪くないではないかと、私は本気で思う。

「顔が好き」で目で追った乾先輩は、アンコールでは、本編中のきりりとした表情を一変させて、溢れんばかりのニコニコ顔になることを知った。他のキャラと違う振り付けをしているんじゃないかと思うぐらいの全力ダンスは、失礼だけどちょっとドタバタしていて愛しかった。サビの2回目の「STILL HOT IN MY HEART」のフレーズの後に肘を2回合わせる振り付けは、他のキャラは「とんとん」なのに乾先輩は「どんどん」という音が聞こえてきそうだった。上から拳を引いてくる振り付けは、そのうちおとなしくなるかなぁと思っていたけど、ずっとあの調子で、見る度に元気をもらえた。

 

六角公演は冒頭以外は氷帝の出番が完全に他校切り分けられていることもあり、青学中心のシーンやベンチは乾先輩(と、原作で好きなキャラである英二)を中心に見ることが増えた。どんどん舞台上の乾先輩を好きになり、「乾貞治」自体をもっと知りたくなって、原作を頭から読み返した。

 

ランキング戦で後輩に立て続けに負け、部内No.3だった自分がレギュラーですらなくなってしまうと決まった直後に「青学もまだまだ強くなる」と思い、笑みまで浮かべられるなんて、どれだけ大人びているのだろう。レギュラー落ちしても腐ることなく、それどころか部内のメニューを考え、時には休日に他校に出向いてまでデータの収集を行い、分析する。さらに表立っては見せないけれど、自分は普段の練習メニューの6倍以上の量をこなしてレギュラー復活を志す。かっこいい姿勢だと思う。

膨大な知識を持っていてもひけらかすわけではなく、トリオなどにも理解しやすく落とし込んで話す様や、自分を破った海堂にも適切な練習メニューを与えるところには面倒見と人柄の良さを感じる。一見、落ち着いているように見えるけれどもノリが悪いわけではなく、興味を持ったことをとことん楽しもうとする姿は見ていて気持ちがいいし、レギュラー復帰できた時に暑かろうがレギュラージャージを着たくて仕方なかったりするところは、年相応で可愛い。他校に煽られても、その場で挑発に乗るわけではなく、自分の技を見せつけてからの「奴らを黙らせられたかな?」なんて実は負けず嫌いであること表れで、心の中で静かに青い炎を燃やすタイプの人間なのだと思う。

 

原作を見て更に乾先輩を好きになって、舞台の上の乾先輩の好きなところもどんどん増えていった。

青学の選手が勝利した時に、おおっぴらにテンションを上げるわけではないが、控えめに胸の辺りで交わすハイタッチやグータッチがすごく「らしさ」が出ていて好きだ。ダビデのダジャレに呆れて、思わずハチマキを垂直落下させたり思わずずっこけたりしてしまうベタな反応が好きだ。(多分たまたま)英二の靴紐がほどけていた日には、いち早く気付いて指摘したり、トリオの回収し忘れた落ち葉が残っていた時には気付いて拾おうとするような(結局それに気付いたトリオの誰かが拾ってたはず)周りを見ているところが好きだ。剣太郎のちゅーハグ曲で、日によっては抱きついたり引っ張ったり「ハグハグのダンスしない?」と誘ってくる英二にちょっと困惑しつつも絶対に突っぱねないところが好きだ。日替わり乾汁のシーンで、たまにえげつない配合の汁を作ったり(バッタと抹茶で「バッチャ」とか本当に頭がおかしいと思う)(褒めてる)それを拒否する首藤くんを羽交い締めにしてまで飲ませるような、目的の為なら時には手段を選ばないところにも一種の尊敬を覚える。

 

立海公演では、なんといってもテニミュの乾先輩としては唯一の公式戦シングルス。4215曲で、大事な思い出を慈しむような優しい歌い方に聞き惚れた。データを捨てて咆哮する様は本当に全力なのが伝わってきたし、緊張感がすごかった。結果は知っているのに、思わず一球決まるごとに拳を握り締め、1ポイント取られるごとに「次はとって!」と心の中で叫んだ。流れる汗の量がすごくて、本当に外でテニスの試合を見ているかのような感覚になった。前年の夏は好きなキャラがどうしても「勝てない」ことに苦しんでいた私は、応援しているキャラが勝つというのはこんなに嬉しいのかと、試合が終わった後に感慨深い気持ちになった。

S3が終わった後に、ベンチでぐったりして英二にされるがままにお世話されたりしているのは、本当に体力を使い果たしているのが伝わってきたし、それでも不二先輩のデータを取ろうと必死になっている様は果てしない執念を感じて、すごくよかった。

 

立海公演の期間中には六角公演円盤のリリイべがあり、当然しょう君のいる関東の回に参加した。なんとなく予想はしていたものの、思った以上にテンションが高くてマシンガントークで、改めて演じるキャラとの違いに驚いた。「役に決まった時、この俺がほんまに2時間や3時間も乾先輩でいられるんかな!?って思うじゃないですか!?」のようなことを言っていて、本当にその通りだと思った。役者さんってすごい。だって、しょう君の乾先輩は、私の中では本編中は一回も「あぁ、素で本人が出てるなぁ」と思った瞬間がないから。キャストさんによっては、ギャグのシーンなんかは本人として笑いをこらえている人もいたりする。それがいいか悪いかは別にして。

しょう君が乾のことを「乾先輩」と呼ぶのは、リアルタイムで乾というキャラが人生の先輩である頃からテニプリを愛しているからだろうし、本当にこの作品が好きなんだろうなぁというのが言動の端々から伝わってきた。トークも、すぐに前に出てこようとはするものの、個人的にはまったく不快には思わなかった。自分の話ばかりではなく、他のキャストの面白い話なども聞けたりするし、基本的にポジティブな話だし。

1番好きなキャラを演じているキャストさんが、舞台上での姿は大好きなのに、諸事情あって3rdで1番苦手なキャストさんになってしまった私にとって、キャラとキャストを同時に好きになれるのはありがたいと思った。

 

 比嘉公演では、ベンチでの乾先輩の顔がとても穏やかで、六角公演の最初の頃とは全く違うなぁと思った。多分、気合を入れて顔を作らなくても、自然に乾になれるようになるほど、役が更に馴染んだのだと思った。しゃべり方も随分スムーズに聞き取りやすくなって、この公演が本公演として最後だと思うと切なくなった。試合の時には、初めてハーフパンツ姿を見たので、あまりにも足がまっすぐで美脚で見惚れた。試合終わりに海堂の背中を雑に叩いて声をかけるところは、「自分から」人に何かをしかけることの少ないテニミュの乾先輩において、海堂が特別な存在であることが伝わってきてよかった。(いつからか叩き方がソフトになってしまったが、最初の頃の方が私は好きだったなぁと思う)

 

乾先輩を好きになってから色々な思い出ができた。

 

六角公演のお見送りでメガネをあげる仕草をしたら、そのポーズを返してくれて、キメ顔がかっこよすぎて目が離せなかったこと。

乾会直後の乾先輩の演技の変化が見たくて、急遽名古屋公演への遠征を決めたこと。

六角公演の大千秋楽の序盤の調子があまりよくないように思え、いつもと違うセリフの言い方にハラハラしたこと。

ドリライ2017前のドリームライフ音声でしょう君が「俺の出番の時にはメガネかけて全力でペンライト振ってな」と言っていたのもあり、メガネ屋を4件ハシゴして、しょう君の乾先輩のデザインに似て自分にも似合う伊達メガネを作ったこと(我ながらこう書くと非常に気持ち悪いけど笑)。

ドリライ2017の大千秋楽の「俺たちのダブルス」であまりにも音を外し、(結果、あれだけゴリゴリに音声編集をかけるテニミュ円盤が、本来の音に寄せることを諦めたのはさすがに笑った)頭を抱えたこと。

立海公演の初日に、歌が急激にうまくなっていたために4215で歌っているのが本当に乾先輩か分からなくなって、3バルから双眼鏡を覗いて息を飲んだこと。

勝手に鍵っ子一人っ子なイメージを持っていたため、六角公演の日替わりでの「お母さんに洗濯してもらわないと」という発言や、チムパ日替わりでの「両親の旅行中に一人で過ごしてみて、あたたかい家庭のありがたさを痛感した」のようなフレーズに驚いてほっこりしたこと。

チムパのお見送りで直接「大好きです」と伝えられたこと。

比嘉公演のお見送りで、後ろの人が木手くんに宛ててやったポーズに「はいでぇ!!あ、間違えました!!」と全力でやっていて微笑ましかったこと。

23.5巻で15年以上越しに初めて好きな食べ物が発覚して、私もパクチーが好きなのでテンションが上がったこと。

ドリライ2018神戸公演で乾ファンの友達と連番からのお泊りをして、乳酸菌飲料で乾杯し、夜中に青9の卒業アルバムと写真を見ながら学生時代みたいにきゃーきゃー騒いで、楽しくて仕方なかったこと。

ドリライ2018の大千秋楽で、ハートの落下物が降ってきた時に「もしかしたら誰かのサインが入っているかも」と頭によぎりながらも、せっかく近くにいる乾先輩の姿を少しでも目に焼き付けたくて、目もくれずに舞台上を見続けたこと。

 

全部全部、本当に大切で愛おしくて、忘れたくない出来事だ。

 

また、私は現在、俳優さんとしてはりょーせい君を応援していて、なんだかんだでテニス卒業後の舞台は全演目とも1回は行っている。弱火なので界隈で使われる狭義の意味での「田中のオタク」ではないと思うが、りょーせい君の1ファンではあると思う。舞台上のりょーせい君は、どの役をやっている時もいつ見てもキラキラしていて、現場に行くたびにこの人を見られて幸せだなぁと思う。

 

 

乾先輩へ。

お誕生日おめでとうございます。

「貴方を好きになってからの毎日が本当に楽しいです」

去年のお誕生日にTwitterに投稿したこの言葉を、今年も変わらずに思っていられることが嬉しいです。貴方を好きになって、たくさん幸せをもらいました。本当に本当にありがとうございます。

 

 

次の公演からテニミュの青学は代替わりして、10代目を迎える。また乾先輩に落ちたらそれはもう運命だと思うし、違う人に落ちたらそれはそれで絶対に楽しい。

特別な「好き」が増えるのは本当に楽しくて、きっとテニミュはまたそれを運んでくれると思う。